安藤 誠さん
ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウインドのオーナーであり、日本屈指のネイチャーガイド。この冬も世界のトップネイチャーカメラマンのガイドを勤めるなど、季節を問わずガイドのオファーが入る。全国を歩いて買い付けた陶器、自らデザイン・製作したハンドメイドアクセサリーなど、さまざまな才能が訪れる人を楽しませている。時にはギターでライブイベントに参加することも。タンチョウのように繊細でまっすぐで、でも自然の中で生き抜くたくましさと大らかさが、クマさんのような大きな優しさとなって出会う人を包んでくれるのかもしれない。北海道認定アウトドアガイド、ほか、講演活動などを全国で行っている。また各教育機関への講義など、多くの人に使える活動を積極的に行っている。
安藤さんの連絡先 ヒッコリーウィンド
鶴居村雪裡原野北14 TEL 0154-64-2956
携帯番号 080-6093-3650
タンチョウの傍らに暮らし、タンチョウととも呼吸をしている、そんな人が存在します。安藤 誠さん。 鶴居村に住んで28年、偶然にもタンチョウが餌を求めて集まるサンクチュアリのそばに活動の場を構えています。頭上をタンチョウが舞い、彼らの息遣いを感じられる距離感に心が躍ります。国内屈指のネイチャーガイドでありながら、写真家でもある安藤さんにタンチョウへの思いをうかがいました。
タンチョウは「湿原の神」、その本来の姿を求めて
オーナーを務める宿「ヒッコリーウインド」で出迎えてくれた安藤さん。「クマさんのような」という形容詞がぴったりのあったかさを感じます。
「サンクチュアリに来るタンチョウも美しいですが、本来どこでどんなふうに暮らし眠っているか、興味がありませんか?」にっこり笑うと目がさらに優しさを増します。安藤さんは道東の自然に生きている動物たちの姿を写真を通して見せてくれています。中でも、タンチョウはここでしか見られない特別な存在だと言います。「タンチョウはアイヌ語でサルロンカムイ、『葦原にいる神=湿原の神』という意味なんです。タンチョウと湿原は一つ、湿原の中にいてこそのタンチョウなんです。今でも湿原の奥深く、彼らは生命を繋いでいるのです」
安藤さんが見せてくれた何枚かの写真。タンチョウが強い意志をもってその場に存在しているのが感じられます。耳を澄ませば、川のせせらぎ、広げる大きな羽、そして風に揺れる枝葉…それらの音が伝わって、一枚の写真が醸す臨場感に包み込まれるような感覚。それが安藤さんの写真の力です。「この湿原、この自然が、タンチョウの棲む場所。水が湧き、流れ、土地を潤し生命を紡ぐ。動物もタンチョウもひたむきに生きている。タンチョウが何故美しいか、何故私たちは惹かれるのか…。写真を通して何かのメッセージを伝えられたら…」そう言いながらも「自分のやっていることは自然の営みのなかでは僅かな時間」と笑います。
タンチョウがこの地を選んだこと
安藤さんは、タンチョウの姿を通して広い目で自然を環境を思っています。自身のネイチャーガイドの原点であるアラスカに一年のうちの数ヶ月滞在し、自然との向き合い方を再認識してくると言います。「タンチョウがこの地を選んだことが重要なんです。こうした素晴らしい自然と50年100年というスパンで自分たちがどう関わっていけるか。何が自分にできるのか、タンチョウを見ながらいつも考えさせられます」もうすぐ厳しい冬が終わります。寒さの中で輝いた命は、やがて新たな命を育むのです。「彼らが長い間続けて来た命の営みを、自分にできることで伝え、残していく。それがガイドとして写真家としての役目でもあると思っています。」全国各地で開催される講演会であり「私塾」でもある「安藤誠の世界」。ライフワークにもなっています。タンチョウを見つめ、タンチョウと同じ視点で湿原の環境を見つめている安藤さんのまなざし。その優しさの意味がわかったような気がします。
写真1:真夜中のタンチョウ。マイナス10度を下回る気温の中、タンチョウを起こさぬよう気遣いながらシャッターを押したという1枚。
川の流れが静かに聞こえてきそうだ。「絵画のような写真を撮りたい」と願う安藤さんの思いが描かれている。
写真2:厳しい寒さの中に温かな光を感じながら、タンチョウも春を待っているのだろうか。
写真3:水墨画のようなモノトーンの美しさ、鏡のような水面がタンチョウの美しさを際立たせているようにも感じます。
写真4:親の後をついて行くヒナ。何か歌いながらピクニックに出かけるかのよう。