変わりゆく阿寒湖温泉・変えようとする人たち その4阿寒湖畔は、テーマ性と意義のある旅行地でありたい。アイヌ文化と清らかな湖水をたたえて。

秋辺 日出男さん

阿寒アイヌ工芸協同組合 専務理事

秋辺 日出男さん

2008年も阿寒湖温泉のイベントがエキサイティングに始まっています。6月1日から始まった「千本タイマツ マリモの護(まも)り火」は旅行者が参加できるイベントで、単なる催しではなく、阿寒湖畔の住民と旅行者が一緒に、マリモの生育地を再生させようという意義が背景にあります。見て食べて楽しむだけの観光ではなく、阿寒湖のテーマに深く関わるイベントを…。
その在り方を探り、積み重ねてきたメンバーの一人が、秋辺日出男さんです。

「千本タイマツ」が勇壮に。マリモを護る聖なる火。

 夜8時。今夜も阿寒湖畔に大きなエネルギーが満ちてきます。「千本タイマツ」の始まり…。湖から「マリモの護り火」を迎え、温泉街の道を大勢の人がタイマツを持って練り歩く。
「アイヌ民族は火を大切なものとして崇めてきました。その精神が千本タイマツに宿っています」という秋辺さん。その言葉の通り、タイマツ行進は、阿寒湖温泉街らしい名物イベントとして定着してきました。大蛇のように浮かび上がる幻想的な生火。その火は、CO2排出を抑制できるバイオディーゼル燃料(廃食用油)を使用し、カーボンニュートラルにも取り組んでいます。

阿寒湖の象徴であるマリモの保全を旅行者と。

 さらに秋辺さんが言います。「マリモは阿寒湖の象徴であり、環境を映す鏡です」。阿寒湖のマリモは1897年に発見され、現在特別天然記念物に指定されていますが、1997年に公表された国のレッドリストでは絶滅の危機性が最も高い、絶滅危惧I類に分類されています。そうした事実も踏まえ、この「千本タイマツ」には、マリモが育つ清らかな湖水や、本来あるべき姿の森や湖をよみがえらせようという願いも込められています。

野外ステージが連夜開催。ライブが次々と目白押し。

 阿寒湖のイベントは、今後次々と繰り広げられます。「千本タイマツ」は第1クールと第2クールからなり11月末までの連日行われる予定。6月中は「アイヌ古式舞踊 野外公演」が行われ、その後「アイヌ古式舞踊&宮永英一ライブ」、そして昨年大好評だった「阿寒湖ルネッサンス&モシリ」の「イオマンテの火まつり プレミアム公演」と続々予定されています。特に、今年初の試みとなる「アイヌ古式舞踊&宮永英一ライブ」は秋辺さんのプロモーションによって実現するライブ。沖縄のロックミュージシャン、宮永英一さんも阿寒湖ルネサンスも、互いに自らの民族性をテーマにする2グループ。彼らががどう協調し合うのか楽しみです。

秋辺さんは、今年7月1日~4日まで平取町二風谷と札幌で行われる、「先住民族サミット アイヌモシリ2008」の主催メンバーでもあります。

2008年阿寒湖温泉街イベント

●「千本タイマツ マリモの護(まも)り火」
第1クール/8月30日(日)まで
第2クール/9月1日(月)~11月30日(日)

●野外ステージ
・「アイヌ古式舞踊」6月30日(月)まで
・「アイヌ古式舞踊&宮永英一ライブ」
 7月1日(火)~8月31日(日)
・「イオマンテの火まつりプレミアム公演
(阿寒湖ルネッサンス&モシリ)」
 9月1日(月)~10月7日(火)
・「イオマンテの火まつり アイヌ古式舞踊
 野外公演」 10月11日(土)~11月30日(日)

イベントに関する問い合わせ:
NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構 TEL:0154-67-3200

「千本タイマツ マリモの護(まも)り火」は、連日20時~20時30分まで行われます。参加予約は宿泊先のホテルへ。

今年は秋まで、さまざまな野外ライブが行われます。