阿寒観光協会 副理事長・事業部長(阿寒観光汽船株式会社・専務取締役)
小林 一之さん
今から8年前、阿寒湖の氷上を利用して、耳なれない「国際スケートマラソン」というスポーツイベントが開催されました。このイベント、ヨーロッパではれっきとしたプロも参加して、冬場の欧州を転戦して賞金を稼ぐもの。とくにオランダでは盛んなスポーツで、当時のオランダ大使館の協力もあって、開催時には数百人規模の参加者が阿寒に集結し、タイムの面でも好結果を残しました。しかし、なによりも効果があったのは、国際交流の面でした。その後、運営にまつわる問題などがあって、3年目で中断しますが、阿寒湖の海外PRの気運を途切れさせてなるものかと、再び立ち上がったのが小林さんたち地元観光協会の面々です。
準備に忙殺される準備室を訪れ、お話しを伺いました。
各方面からの協力も得て、滑り出しは順調
「この企画、スケートマラソンでは一般的ではないとの考えから、『国際スケートフェスティバル』にネーミングを変更しました。阿寒町が釧路市と合併したこともあって、釧路市や釧路スケート連盟さんの協力もいただけることになり、まずは滑り出しは順調というところでしたね」と、小林さんの開口一番は笑顔です。
なんでも小林さんのご子息の二人ともスケート競技の選手ということもあって、オランダには海外遠征に何度も出かけているのだそうです。そのため、ご子息を通じて彼の地のスケートマラソンに対する熱狂ぶりは把握済み。そこで、小林さんたちは、オランダ総領事に後援の打診をしたところ、再び現地を訪れてくれ、快く了解してくれたそうです。
コース造成経費も、地元企業の協力でめどが立ちました
昨年からスタートした組織づくりは比較的順調でしたが、問題はコース造成などの経費の捻出。阿寒湖が十分な厚さに結氷してから、走行する距離に合わせてショベルなどの大型重機が不可欠なのです。まして、阿寒湖は結構な量の雪が降ります。降雪地域の毎年の除雪費用を考えただけでも、経費の問題は私たちでも理解できます。
「本当は通常のマラソンのように、40km以上のコースも作りたかったのですが、短いコースでもフェスティバルの理念は実現できると考え方をシフトして、地元の建設業者の方々のところへお願いに行きました。すると、どの会社の方々も阿寒のためになることならと、予算内で2.5km弱のコース造成を気持ちよく担当してもらうことができました。感謝以外なにものでもないですよね」
阿寒湖畔の住人と一緒に胸を張れるイベントに育ってくれたら……
「スケートマラソンを前身として、また再び国際的なスケートイベントを開催する訳ですが、多くの方々のご協力で寄付もいただき。前回に比べると規模も予算も小さくなりますが、国際交流面でも、なにより阿寒町民にとっても大きく胸を張れるイベントになればいいな、という思いがすべてです」
いま、北海道の活力が懸念されている状況の中で、殻を打ち破り、ブレイクスルーのために新しい発想で取り組むイベント仕掛人の姿がここにありました。こうした人たちのトライアルがあれば、規模の大小にかかわらず意味のある挑戦になるのだと実感できるインタビューでした。