きれいな落ち葉や転がる木の実 支笏の水が育んだ秋の森からの贈り物。

支笏湖の森は、たくさんの樹木と、野鳥が棲んでいるワンダーランド。
秋が深まるとともに、その表情が少しずつ変化します。
普段の生活で触れることの少ない
足下の木の実や落ち葉には、樹を知るきっかけが詰まっています。
紅葉の秋、森に流れる悠久の時を身近に感じてみませんか。

湖畔をほんの少し歩いて樹と対話できる自然の中の素敵な時間

秋の風物詩といえば、童謡にも歌われている「ドングリ」。でも、ドングリって、

何の樹に実をつけるか知っていますか?答えは「ブナ科の樹木」。

ブナ系の中でも、支笏湖周辺で見られるのは「ミズナラ」で、保水力の高い土壌を好んで生息する、支笏湖の環境に適した種のひとつ。9~10月にはドングリをたくさん落とします。
水の謌のすぐ近くに位置する「支笏湖ビジターセンター」の裏手に広がる通称「エゾリス広場」を歩いてみましょう。この広場内だけでも、実は多くの種類の樹や木の実を目にすることができます。しかも、木にはそれぞれ、名前と特徴などを記したプレートが付いており、初心者にも親切。
例えば「カツラ」なら、ハート形の葉が特徴で、新緑の浅緑色から秋は黄色に

変化します。そして落ち葉の匂いを嗅ぐと、カラメルのような良い香りがするのです。「ホオノキ」の葉は大きくて、料理の「朴葉焼き」や「朴葉味噌」に使われる葉っぱ。そう聞くと、何だか親しみがわくような気がしませんか?ホオノキの実は大きくて硬く、支笏湖周辺のカラスがいたずらをして、人間の頭の上にわざと落とすこともあるそうです。
樹には、昆虫や動物たちもやってきます。ドングリを食べにカケスが、

根元にアリの巣があると、そのアリをついばみにキツツキが。そして、時々樹に空いている穴は、モモンガのすみか。夜行性なので日中に見かける機会は

少ないけれど、モモンガはこんなすぐ近くにも棲んでいるのです。
また、エゾリス広場に生えた樹の幹には、薄い青緑色をした「地衣類」が多く

見られます。これは、菌類とバクテリアからなる光合成生物で、「空気がきれいなところにできる」と言われているとか。支笏湖畔の空気がクリアに澄んでいることの証です。
足下に転がる木の実や落ち葉をヒントに樹を知ることで、森の存在がこれまでよりもずっと身近に感じられます。色づく風景を楽しみながら、ぜひ、秋の湖畔をゆっくりと散策してみてください。

 

写真1:支笏湖ビジターセンターの湖側に広がるエゾリス広場。あずまやが整備され、シナノキ、ハリギリ、ハンノキほか、ここだけでも多様な大木を観察できる。 写真2:エゾリス広場には「アカゲラ」をはじめ、支笏湖の樹にやってくる野鳥についてのイラスト入り説明ボードもある。水の謌からすぐ、散歩コースにもぴったり。 写真3:実際に実や葉を見ても、思い浮かばないのが樹木の名前。ここに書かれている分類や特徴を読むことで、1度は耳にしたことがあったり、意外と身近な家具材に使われていたり、「こんなところにこんな樹が」という発見が、きっとあるはず。 写真4:少し歩いただけで、あっという間に色も形も大きさも異なる葉っぱが集まった。これだけたくさんの種類の樹が共生する森も、実は希少だそう。 写真5:キュートなハートの形をしたカツラの葉。カラメルのような甘い香りが特徴。 写真6:ドングリの実と、黄色く色づいた落ち葉。拾って旅の土産話に持ち帰ろう。 写真7:鮮やかに紅葉したイタヤカエデとハウチワカエデの樹。 写真8:下から見上げたミズナラの大木。

写真9:山線鉄橋から見下ろした千歳川の水。美しいエメラルドグリーンとコバルトブルーのグラデーション。 写真10:秋の夕暮れに赤く染まる空と山の端、雄大な支笏湖のコントラスト。澄みきった空気と静かでロマンティックな風景は美しく、それだけでもここを訪れた意味がある、かけがえのない時間を提供してくれます。

 

例年、支笏湖の紅葉の見ごろは10月中旬。

樽前山のハイキングや朝の湖畔散歩に出かけ、

ぜひ自然の中で過ごしてみましょう。

また、カヌーで水上から眺める紅葉もオススメ。

 

 

 


自然公園財団支笏湖支部 主任

瀬戸  静恵さん

江別市出身。2003年より支笏湖

ビジターセンターに勤務し、

四季折々の自然の魅力をガイドしている。

現在はアライグマの調査も担当。