カヌー人が語るカヌーと人生

原始の森に抱かれ、北海道を象徴するかのような澄んだ湖・支笏湖そして千歳川をベースに『バイエルンの風カヌー学校』を営む鳥畑博嗣さん。カヌーが大好き、カヌーのためならどこへでも行くというカヌー人・鳥畑さん。日本の競技カヌーの歴史、カヌーの普及と教育にその名を刻む人が、千歳市にいます。カヌー人のフィールド、支笏湖でお話をうかがいました。

 

鳥畑 博嗣(とりはた ひろし)

1957年、小樽生まれ。88年にドイツカヌー連盟A級コーチ資格取得。帰国後「バイエルンの風カヌー学校」開校。94年ワールドカップ日本チーム監督、95年世界選手権日本チーム監督、96年アトランタオリンピックのコーチングスタッフを務めた他、日本選手権や国体コースのデザインも手がけ、NHK等のカヌー番組の講師、ディレクターなど活動は幅広い。2012年、13年にはパラカヌー世界選手権大会の監督を務めるなど、パラカヌーの選手育成にも力を注いでいている。現在、2016年リオ・パラリンピックの日本チームの監督という大仕事に取り組んでいる。


バイエルンの風カヌー学校 千歳市蘭越58-13TEL0123-26-2901   Tel: 090-8426-3112

メール mailto:torihata@d1.ne.jp  ホームページ http://chitosegawa.web.fc2.com/

カヌーの講習体験などはいくつかのコースの他希望に応じたプログラムございませす。詳しくは問い合わせ下さい。


「世界一のカヌー人」は支笏湖に

カヌーを積み込んだバスに導かれ、到着したのは支笏湖畔のモーラップ。そこでまず最初に習うことは、ライフジャケットの正しい装着と、救助ロープの投げ方でした。 「何故こんなことを…って思うでしょう。実は私は泳げない。でも、救助する方法、される方法を知っておくことで、水の上での安心感って変わるよね。カヌーは水と親しくなるための素晴らしい道具。でも自然の中で道具を使って楽しむには、そのリスクも知っておかなくてはいけないよね」レクチャーを受けながら、いかに自分が無防備で、カヌーに乗ることだけを望んでいたかわかります。高ぶる気持ちをクールダウンさせながら、鳥畑さんのかけ声でカナディアンカヌーを湖畔に運びます。湖に浮かび、一漕ぎ。パドルを握ると、今度は鳥畑さんの表情が、楽しくてしかたがない子供のように輝きます。「カヌーをやりたくなったのは、小学校5年の時。それから独学、自己流で始めました。自分のカヌーを最初に浮かべたのは、小樽の海(笑)。大学時代には国体や日本選手権にも出場したよ。1983年にイタリアで開催された世界選手権に行った時に、ヨーロッパの選手と自分の技術の差を目の当たりにして、これじゃあだめだと。だから、当時世界チャンピオンのリチャード・フォックスに学び、ドイツのアウクスブルグで国際レースに出場した後、そのままドイツで学ぶことに。5年間とにかく学び、ドイツカヌー連盟のコーチの資格を取得。日本人では初めてかな。でもそこで、やっと自分が目指すカヌー人生のスタートラインに立てた気分だったね」カヌーのためなら命がけ、とにかく思い立ったらすぐ行動。「自称世界一のカヌー好き、だからカヌーに関しては行動力も世界一だと思ってます(笑)」

 

生きざまを伝えてゆくための道具としてカヌーを学んでほしい

「支笏湖、千歳川をベースにしようと思ったのは、やはりこの自然。日本屈指の透明度を誇る水質の良さ、人工的なものが少ないモーラップ、そして夏でも水が涸れない千歳川。国内あちこちで教えたり、競技をしたりと巡りながら、自分の場所を探していたのです。その結果、やはりここだと。カヌーを学ぶ楽しさ、レースの楽しさから、今はカヌーの素晴らしさを多くの人に伝えたいですね」支笏湖ブルーと呼ばれる深い碧の水面。駒ヶ岳、恵庭岳と連なる山を背景にゆったりとパドルを動かしながら、鳥畑さんは語ります。「ヨーロッパのカヌーは親子三代の歴史がある。自分の子供に孫に豊かな自然の中でカヌーを通して人生を教え、スポーツとして着実に継承されています。ここはそれができる数少ない場所。飛行機なら日帰りでカヌーに乗れる。自然の中で集中して密度の濃い時間を過ごしながら、子どもに生きざまを伝えていく…そんなふうにカヌーを学んでほしいと願っているんです」鳥畑さんのカヌー学校は、人生の学校かも知れません。カヌーを通して自分を向き合い、家族と向き合えるチャンスを与えてくれるでしょう。楽しかったお礼と言うと、世界一のカヌー人が満面の笑みで「良かった、ありがとう」と握手をしてくれました。今度は千歳川で、鳥畑さんに会いたくなりました。

 

 

 


支笏湖を愛し、守り、カヌーを楽しむ

2010年から支笏湖を拠点にカヌーの普及を目指して活動を始めた『支笏ガイドハウスかのあ』。 「こんなに透明度の高い湖でカヌーを楽しめる場所は、他にはありませんね。毎日湖の表情が変わり、色々なポイントで楽しめることも魅力だと思います」と代表の松澤直紀さん。『かのあ』の体験メニューは多彩です。のんびりとカヌーに乗り、途中でカフェタイム(6種類のドリンクメニューやお菓子も用意)を楽しめる3時間コースから、しっかり教わるカヌー塾、ファミリーや団体向けまで、内容は違ってもどれも支笏湖の自然の豊かさ、美しさを感じられるプログラムです。また、松澤さんらスタッフが積極的に取り組んでいるのが、支笏湖の自然保護プロジェクト、通称「Sプロ」。「支笏湖で暮らしている私たちだから気付く自然の変化、出来る活動があると思います。例えばクリーンアップのゴミ拾いもその一つです。ダイビングを楽しむ方々とも協力するなど、さまざまな形で展開していきたい」と話します。近隣の街から、また本州からもリピーターが多いのは、こうした『かのあ』の心に共感するお客様がたくさんいるからでしょう。カヌーの語源と言われる「カノア」は、ハワイ語では「自由」の意味も。だから「カヌーが大好きな自由人」なのだとか。『かのあ』の仲間に入ってみたくなりますね。

 

支笏ガイドハウスかのあ

千歳市支笏温泉番外地305号 TEL0123-25-2430

http://gh-canoa.com/