水質日本一を誇る支笏湖をその源に、清冽な流れとなって周辺とそこに住む人間に潤いと恵みを与え続ける清流、千歳川。日本の名水百選にも選ばれた美味しい水の源として地元の人々に愛され、目をこらすと水中の魚や川エビなどが見えるほど、清らかで透明度が高い川でもあります。夏号では、千歳川の「美しい水の流れ」にスポットを当て、その歴史や、流れに沿った見どころと、水に親しむアウトドアアクティビティをご紹介します。
水質日本一の支笏湖を源に低地を流れる千歳川。
淡水魚が棲み、秋にはサケが遡上
日本有数の透明度の高さと水質を誇る支笏湖を源とする千歳川は、石狩川水系の支流として支笏湖の東側に流れている、美しいコバルトブルーの清流。そのまた支流であるナイベツ川は、日本の名水百選にも選ばれているほどです。
歴史をさかのぼること約6000年前、海面の隆起により、現在の千歳川の流域が石狩湾の一部になりました。やがて、石狩川や海の波が運んできた砂や泥が積もって平野ができましたが、千歳川流域は石狩川との合流地点よりも低地であり、雨が降ると水がたまりやすい地形をしています。そのため、石狩川の水位が高くなると、千歳川の水はそこへ流れ込むことができずに氾濫し、堤防決壊の洪水による水害が過去に何度も起こっています。そこで千歳川流域を守るための治水対策として、堤防の強化や、一時的に水を貯める遊水池を設けるなど、現在も河川の整備は続いています。
また、千歳川には様々な魚が生息しています。ヤマベ、ウグイ、トゲウオなどの淡水魚、秋には産卵に遡上するサケの群れ…。「千歳サケのふるさと館」ではインディアン水車を使用した秋のサケ漁を見学することができ、館内には7つの大きな窓から水中の様子をのぞくことができる「千歳川水中観察室」があります。
清く流れる千歳川沿いには水に親しめるスポットがたくさん。
涼感漂うせせらぎを訪ねてみて
さらに、千歳川沿いには、実は多様な親水スポットがあります。1989年に整備された「名水ふれあい公園」は、その名の通り敷地内にナイベツ川湧水がわき、浅瀬での水遊びを楽しみながら自然と触れ合える公園です。
そこから少し車を走らせた場所には千歳川を利用した「王子製紙第一発電所」のある「水明郷」が。調整池の周りには桜が植樹され、静かな公園のようになっています。眼下に発電所を望む場所までは一般開放されていて、その高低差130メートル。壮大なパノラマが広がります。 サイクリングロードも整備されているので、夏は自転車で風を感じながらのエコな千歳ツーリングもお勧め。この夏、千歳川の水のせせらぎを訪ねてみませんか。
ウサクマイ橋から見える、3匹のキツネのオブジェ。アイヌ民話「キツネのチャランケ」をモチーフにしたもの。
水明郷パーキングには「ゴミはお持ち帰りください。ヒグマ出没の原因となります」のイラスト入り看板が設置されている。水名郷周辺には、両脇に木々が立ち並ぶ散歩道もあり、のんびりとした空気が漂う。
王子製紙千歳第一発電所[写真1・2]
1910年から稼働している、歴史ある水力発電所。発電所は第1から第5まであり、王子製紙苫小牧工場や支笏湖地域への送電を行っている。現役で稼働する日本最古の産業発電所でもあり、落差130メートルの渓谷はまさに絶景。春には多くの桜が咲き、夏は緑濃い樹海が見下ろせ(1)、秋は紅葉スポットに。これまでの歩みをまとめた年表(2)が設置されているほか、俯瞰図の案内板の下にあるボタンを押すと、発電所の歴史と概要について音声ガイドが流れ出す。見晴らしの良さに開放的な気分になれるので、ドライブ中のリフレッシュポイントとしてもオススメ。
名水ふれあい公園[写真3・4・6・7]
千歳市民にとっての水源である「ナイベツ川湧水」が、名水百選に選ばれたことを記念して整備された公園。約7000平方メートルの敷地内にはナイベツ川を再現し、木製の散策路が整備され、森林浴気分で水と触れ合える。名水のせせらぎに心癒やされるスポット。園内には湧水を汲める場所もあり、ペットボトルやポリタンクなどの容器を持参して立ち寄る人々の姿も見られる。夏に見られる「カラマツソウ」は、花がカラマツの葉の付き方に似ていることから名が付いた。
サイクリングロード[写真5]
支笏湖と札幌、千歳、苫小牧を結ぶサイクリングロード(支笏湖公園自転車道路)が、国道や道道と平行して整備されている。夏は爽やかな風を体で感じながら、軽快に自転車でのツーリングを楽しみたい。