語り部たちの素顔 その17千家盛雄さん

あかん遊久の里 鶴雅
語り部の集い

千家 盛雄さん

今夜は、阿寒湖のアイヌコタンで暮らす
千家さんが、アイヌの人々の話をしてくれます。

千家 盛雄さん

「皆さん、アイヌとはどんな意味だと思いますか?アイヌとは『人間』という意味なのです。誇りを持って生き抜くことができる者。それがアイヌだと、私たちは幼いころから、おじいちゃんやおばあちゃんに教えられました。皆さんは普段、アイヌ語に触れる事などないと思っているでしょうが、私たちの周りでは、案外多くのアイヌ語が使われているんですよ。
 北海道の地名はほとんどがアイヌ語由来であることは有名ですね。北海道の名付け親である松浦武四郎が、幕府の命を受けて、この大地がまだ「かいのくに(自らの国土の意味)」と呼ばれていた頃に約9千箇所もの地名を調べあげ、それが今日の北海道の地名になっています。たとえば、阿寒という地名。これは、アイヌ語で「普遍不動である」「どっしりとして動かない」という意味なのです。それに、実は北海道以外でも、日本各地にアイヌ語由来の地名は残っています。これはかつて、北海道以外にもアイヌ民族が住んでいたということでしょう。
 青森のねぷた祭り。あの「ねぷた」とは、「なんだこれ!」「びっくりした」というアイヌ語なのです。そして「ラッセーラー、ラッセーラー」というねぷた祭りの掛け声。あれは、「がんばれ、がんばれ」という意味のアイヌ語。想像ですが、あのねぷた祭りとは、和人がアイヌ民族を追い払う戦いも模しているのではないでしょうか。それと、北海道名物の「ソーラン節」。「ソーラン、ソーラン」と歌っていますが、あの「ソーラン」というのもやはりアイヌ語で、「海の波が上がる、下がる」という意味なのです」

 これまで知っていた言葉が実は、アイヌ語であったという話に感嘆しつつ…。千家さんが語り終えた後も、参加者の人たちから、アイヌ民族が使う道具や司祭などについて、たくさんの質問が飛び出していました。