常呂町農業協同組合
代表理事組合長
小野寺 俊幸さん
小野寺さんは、常呂町のカーリング振興に最初から携わってきた人でもあります。トリノ五輪で「カーリング娘」旋風を巻き起こした、カーリング日本代表・主将の小野寺歩さんは、小野寺さんのお嬢さん。
かつて7世紀から9世紀にかけて、常呂周辺で花開いたオホーツク文化。「オホーツク人がこの地を移住先にした理由は分かります。大地が凍るような北国でありながら、海はおだやかで気候が温暖。土壌も栄養に恵まれて、植物も豊かに実る。ここは北方の楽園のような地域ですから」。そう話す常呂町農業協同組合代表理事組合長の小野寺 俊幸さんは、自ら農業生産者であり、常呂の「農」と「食」に夢を抱く人。夢への道筋を築いている、今の思いを聞いてみましょう。
「常呂の農業特産物は?と聞かれるたび答えに困ります。タマネギ、ジャガイモ、アスパラ…。とにかく何でも取れるから特産を決めにくい。しかもどの農産物もミネラル成分が高いのが特徴です」と言う小野寺さん。幸運にも常呂川が上流から運んでくれた土はとても肥沃で、その土が堆積してできた常呂の地は、太古からあらゆる種を豊かに育んできました。さらに、農地には常呂の海の特産物であるホタテの貝殻を入れ、畑はさらに健康になります。
しかし、こうした恵みの土壌で育った自慢の農作物は、ほとんど本州へと出荷されており、地元で消費される機会が少ないのが現状。そんな中、小野寺さんが考えることとは…。「レストランでも家庭の食卓でも、地元の産物を使って料理を作る。これがスローフードの原点でしょう。何でも取れた場所で食べるのが、1番おいしい。その土地、その気候風土の中で味わうと、本当のおいしさが分かるものです。私はそういう意識と取り組みを応援していきたい。地元のシェフや食の提供者たちが集まって農園を作ったりね…。地産地消をもっと濃縮したような『畑のキッチン』構想が、今、私の頭の中に育っています」。
小野寺さんは、夢を一つ一つ植えています。自宅の畑の隅や庭に育つ、試作作物がその夢たち。鶴雅グループの社長が描く「北の大地にブドウ畑を育て、いつかオリジナルワインを作りたい」という夢も、小野寺さんがすくい上げてゆっくりと育てています。「巨峰など、いくつかの種類を植えていますよ。試作とはいえ元気に育っているね。どんな味になったっていいのです。その地で生まれたワインを、その地で飲める。それが幸せでしょう」。
そして、夢を育て上げたその先は…? そう問うと、「カーリングコーチに専念します」と、いたずらっぽい笑みを浮かべたのでした。