網走・歴史街道をゆく その3戦争から遺跡を守ろうと…。

遙か昔、それは今から1200年前のこと。
アムール川下流域から流氷に乗って、
網走などオホーツク沿岸へたどり着いた民がいました。
海獣を狩猟しながら豊かな文化を極めていた、流氷の民「オホーツク人」。
彼らの存在が明らかになったのは、1913年のことでした。
オホーツク文化の証である「モヨロ貝塚」が発見され、
北海道の古代史に新たなページが刻み込まれたのでした。

1948年9月に撮影された「モヨロ貝塚発掘調査団」の記念写真。前列右から2人目が米村喜男衛さん。

 考古学に夢を馳せていた青森県出身の若き理髪職人、米村喜男衛(きおえ)さん。この人によって発見されたのが「モヨロ貝塚」です。
 米村さんは、網走川の河口付近で縄文系とは違う土器や、竪穴式住居跡を発見し、オホーツク文化の存在を実証しました。遺跡の調査・発掘、そして資料の整理や分類。米村さんは理髪店で仕事をしながら、遺跡研究に没頭してゆきます。
 ところが1941年、太平洋戦争が開戦すると、帝国海軍はモヨロ海岸に軍事施設の建設を計画。これでは遺跡がほとんど占拠され、遺跡は消滅してしまう…。
米村さんは軍事関係者にモヨロ遺跡の重要性を必死に説くと、その結果文部省も動き、工事は着工直前で変更されました。そして、米村さんの努力と情熱は考古学学会をも動かし、1947年から東大や北大などの研究者からなる「モヨロ貝塚発掘調査団」が結成。
 大々的な発掘調査が開始されました。米村さんがたった1人で続けてきた発掘研究が、大いなる飛躍を果たした時でした。

北海道立北方民族博物館

日本で唯一の北方民族文化を紹介する博物館。オホーツク文化コーナーも充実しており、総展示資料・約900点という規模と最新の設備は一見の価値があります。

網走市字潮見309-1 TEL:0152-45-3888
営:9時30分~16時30分
休:月曜(祝日は開館)、年末年始
料金:一般450円、大学生・高校生150円、
小中学生・65歳以上・身障者は無料